この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
健康診断や定期的な血液検査で「BUNが少し高いですね」と言われると、「腎臓が悪くなっているのでは?」と心配になる飼い主様は多いと思います。
BUNは腎臓の状態を考えるうえで大切な検査項目ですが、BUNが高いという結果だけで腎臓病と判断できるわけではありません。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、BUNだけを見るのではなく、クレアチニン(Cre)やSDMA、尿検査、これまでの検査結果の推移、症状、必要に応じて画像検査なども組み合わせながら、その子の状態を総合的に判断しています。
この記事では、BUNが高くなる理由と、当院ではその結果をどのように考え、どのような検査につなげているのかをお話しします。
BUNが高いと聞くと、まず腎臓病を心配されると思います。
実際に、腎臓に負担がかかっている場合にはBUNが高くなることがあります。
ただし、BUNは腎臓だけの影響を受ける検査項目ではありません。
そのため当院では、健康診断などでBUNだけが少し高かった場合に、すぐに「腎臓病です」と判断することはありません。
まず、
「なぜBUNが高くなっているのだろう?」
というところから考えていきます。
BUNが高くなる原因として、次のようなものが考えられます。
などです。
例えば、体の水分が不足している場合にはBUNが高くなることがあります。
また、消化管から出血している場合や、採血前に食事をしている場合にも、BUNが高めに出ることがあります。
つまり、
「BUNが高い=腎臓病」
ではなく、
「BUNが高くなっている理由を探していく」
という考え方が大切です。
個人的には、スクリーニング検査で1つの数値だけを見て病気を決めてしまうことには注意が必要だと思っています。
検査項目が変化する原因は1つとは限りません。

BUNが高かったときには、BUNだけを繰り返し見るのではなく、別の角度からも腎臓の状態を確認していきます。
腎臓の血液検査では、BUNだけでなくクレアチニン(Cre)やSDMAなども確認します。
SDMAは腎機能の変化を比較的早い段階で捉えるために使われる検査項目です。
例えば、
という場合には、
「本当に腎臓が原因なのだろうか?」
ということも考えます。
反対に、複数の腎機能に関連する検査項目に変化が見られる場合には、腎臓についてもう少し詳しく調べてみようと考えるきっかけになります。
ただし、CreやSDMAについても、その数値だけで判断するわけではありません。
大切なのは、複数の情報を組み合わせて考えることです。
腎臓は尿を作る臓器です。
そのため、腎臓の状態をチェックするには血液検査だけでなく、尿検査も重要になります。
血液検査の結果だけでなく、尿比重がどのように変化しているかも確認します。
ただし、ここでも
「尿比重が低いから腎臓病」
と、それだけで判断するわけではありません。
犬なのか猫なのか、年齢、これまでの尿比重の推移、ほかの検査結果、その子の症状なども合わせて考えます。
例えば、定期的に検査をしている中で尿比重が少しずつ低くなっていたり、ほかにも腎臓の病気を疑う結果が重なってきたりすれば、もう少し詳しく調べてみようと考えることがあります。
検査結果だけでなく、飼い主様が普段感じている変化も非常に大切です。
例えば、
といった変化です。
こうした情報は、検査機器からは分かりません。
毎日一緒に生活している飼い主様だからこそ気づけることがあります。
「こんなことを言っても関係ないかな」と思うようなことでも、気になっていることがあれば診察のときに教えてください。

血液検査や尿検査、症状などを確認して、
「もう少し腎臓について詳しく見てみたい」
と考えた場合には、超音波検査やレントゲン検査などの画像検査を行うこともあります。
画像検査では、腎臓の大きさや内部の状態などを確認します。
ただし、BUNが少し高かった子全員に、すぐ超音波検査を行うわけではありません。
当院では定期的に健康診断を受けていただいている子も多いため、これまでの検査結果と比較しながら、
「今までと少し違うな」
「今回の変化はもう少し詳しく見た方がよさそうだな」
という感覚も大切にしています。
「血液検査の前は、絶食して行った方がいいですか?」と疑問に思う飼い主様もいらっしゃると思います。
当院では、血液検査の前に絶食をお願いすることは基本的にありません。
絶食することで気分が悪くなったり、吐いてしまったりする子もいるためです。
そのため、普段通り食事をしていただき、食べた場合には「何時頃に食べたか」を教えていただいています。
一方で、食事の影響で検査値が高く出ている可能性が考えられる場合や、飼い主様がその点を気にされている場合には、相談したうえで絶食して再検査することもあります。
検査前の食事については、検査内容や動物病院によって考え方が異なるため、事前にかかりつけの動物病院へ確認してください。
再検査の時期についても、
「必ず何日後」
と一律に決められるものではありません。
ほかの検査結果や症状を確認して、緊急性が低いと判断される場合には、
「来週もう一度確認してみましょう」
ということもありますし、
「2週間後、1か月後にもう一度見てみましょう」
ということもあります。
反対に、BUN以外の検査項目にも変化があったり、体調にも気になる点があったりする場合には、早めに追加の検査を考えることもあります。
再検査の時期も、BUNの数字だけで決めることはほとんどありません。

実際の診療では、
BUNが高かったけれど、詳しく確認してみると腎臓病とは考えにくかった
という子は珍しくありません。
一方で、血液検査ではほんの少しの変化だったとしても、
「以前と何か違うな」
と感じて、過去の検査結果や尿検査などを確認していくと、
「やはり腎臓についてもう少し詳しく調べた方がよさそうだ」
と判断することもあります。
血液検査はとても大切な検査ですが、機械が示してくれる数字は、その子を判断するための情報の1つに過ぎません。
実際の診察では、
などを合わせて評価する必要があります。
獣医師が実際にその子を診て感じることも、診療では大切な情報です。
健康診断を受けて、BUNが少し高いと言われた。
Creは正常だったけれど、本当に大丈夫なのか気になる。
尿比重が以前より低いような気がする。
そのような疑問があれば、そのままかかりつけの先生に相談してみてください。
「もう少し腎臓について調べてもらいたいです」
と伝えても構わないと思います。

BUNは、犬や猫の腎臓の状態を考えるうえで大切な血液検査項目です。
ただし、BUNが高いからといって、それだけで腎臓病と判断することはできません。
BUNが高くなる背景には、
など、さまざまなことが考えられます。
そのため、CreやSDMA、尿検査、尿比重、症状、過去からの検査結果の変化、必要に応じた画像検査などを組み合わせながら判断していくことが大切です。
宮田動物病院(静岡県沼津市)でも、1つの検査結果だけで決めつけるのではなく、その子のこれまでの経過や実際の体調も含めながら診断・治療をしています。
血液検査の結果について気になることがある場合には、ご相談ください。
BUNなどの検査値だけでなく、実際に慢性腎不全と診断された場合の考え方や治療について知りたい方は、こちらの動画も参考にしてみてください。