この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
「療法食に切り替えたのに、なかなか食べてくれない」「無理に食べさせようとするほど嫌がってしまう」と悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
猫の慢性腎不全では療法食による食事管理がとても大切ですが、実際には「食べてくれない」という壁にぶつかることは珍しくありません。
本記事では、慢性腎不全の猫に療法食を食べてもらうために、当院で実際にお伝えしている3つのコツをご紹介します。どうしても療法食を食べてくれないときの考え方についても解説しますので、おうちの子に合った食事を探す際の参考にしてください。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、腎臓用の療法食をなかなか食べてもらえない場合、まずは5種類ほどのサンプルをお渡しし、その中から好みの合うフードを探すお手伝いをしています。療法食の選び方や続け方でお困りの際も、お気軽にご相談ください。

腎臓用の療法食になかなか口をつけてくれない理由の一つは、今まで食べていたフードと比べて味が薄く、美味しく感じられないためだと考えられます。
腎臓用の療法食は、腎臓への負担に配慮してタンパク質やナトリウム(塩分)などの栄養成分が調整されています。そのため、一般的なフードとは味が薄く感じられ、食いつきが変わってしまうことがあります。
特に猫は匂いで食べ物を判断する動物のため、療法食を受け入れるまでに時間がかかることがあります。療法食に切り替えてから食べてくれなくなったという飼い主さんは、実はとても多くいらっしゃいます。

療法食を少しでも食べてもらうために、当院で実際にお伝えしている3つの工夫をご紹介します。
どれか一つが正解というわけではありません。おうちの子によって合う方法は異なるため、いくつか試しながら、その子に合った方法を見つけていきましょう。

療法食を安定して食べてもらうためにまず大切なのは、1種類に絞らず、複数の療法食でローテーションを組んであげることです。
腎臓用の療法食は各メーカーからさまざまな種類が販売されており、香りや粒の大きさ、食感などによって食いつきが変わることがあります。ドライフードでもウェットフードでも構いませんので、できるだけ多くの種類を試し、おうちの子の好みに合う療法食を探してみましょう。
当院では、まず5種類ほどの腎臓用療法食のサンプルをお渡しし、その中から食べてくれるものを探していただいています。もし3種類ほど食べてくれるものが見つかれば、それらを日替わりで与えることで、食事に飽きさせないようにするイメージです。


その子の好きな匂いを療法食につけてあげることも、特に猫に有効な方法です。
例えば、お魚の匂いが好きな子であれば、市販のかつおだしパックを袋のまま療法食と一緒に容器へ入れ、軽く振って一晩置いておきます。すると匂いがごはんに移り、それで食べてくれるようになる子もいます。このとき、だしパックの袋が破れないよう注意してください。
この方法は、腎臓用の療法食だけでなく、他の疾患で療法食へ切り替える際にも応用できます。

療法食を電子レンジで軽く温めるのもおすすめです。ウェットフードだけでなく、ドライフードでも使えるテクニックです。
温めることで香りが立ち、食べてくれるようになる子もいますので、ぜひ試してみてください。


療法食・お薬・サプリメントの中で、優先順位を決めておくことも大切です。
慢性腎不全と診断されると、お薬やサプリメントを使う機会が増えることがあります。しかし、お薬やサプリメントを飲ませることに一生懸命になるあまり、その時間自体が猫にとって大きなストレスになってしまうことがあります。
毎日の投薬が続くことで、「また嫌なことをされる」と感じ、ごはんまで食べなくなってしまう子もいます。せっかく腎臓のためを思って続けていても、食欲が落ちてしまっては本末転倒です。
もちろん、お薬やサプリメントも慢性腎不全の管理には大切です。しかし当院では、それ以上に毎日しっかり食べられることを大切にしています。まずは食事を安定して続けられることを優先し、その上で、お薬やサプリメントを無理なく続けられる方法を一緒に考えていきます。


腎臓用の療法食は、腎臓への負担に配慮して作られた、慢性腎不全の猫にとって理想的なごはんです。
一方で、慢性腎不全は、現状では治すことが難しい病気です。そのため治療の目的は、「残された腎機能をできるだけ長く守りながら、生活の質を維持すること」にあります。
もちろん、療法食を食べられることが一番理想です。しかし、どうしても食べてくれず、体重まで減ってしまうようであれば、療法食に固執しすぎないという考え方も大切です。
当院でも、「どうしても療法食を食べないのであれば、まずは一般食でも構いません」とお伝えすることがあります。まずは安定してごはんを食べられることを優先し、その中で療法食を少しでも取り入れられる方法を一緒に考えていきます。

療法食を食べてもらうためには、複数の療法食を試したり、好きな香りをつけたり、温めて香りを立たせたりと、おうちの子に合った工夫を見つけることが大切です。そして、お薬やサプリメント以上に、「毎日しっかりごはんを食べられること」を大切に考えてあげてください。
慢性腎不全のケアは、病気のステージや体調によって異なります。そのため、おうちの子にとってどのような選択肢があるのかは、かかりつけの獣医師と十分に相談することが大切です。大切なのは100点満点を目指すことではなく、おうちの子に合った方法を無理なく続けることです。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、療法食をなかなか食べてくれない子のために、まず5種類ほどのサンプルをお渡ししながら、おうちの子に合う療法食を一緒に探すお手伝いをしています。愛猫の慢性腎不全や療法食のことでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
本記事の内容は、当院のYouTubeチャンネルでも動画で詳しく解説しています。実際の方法を動画で見てみたい方は、ぜひあわせてご覧ください。