この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
「動物病院で治療してもらっても、しばらくするとまた耳を痒がる」「毎年同じ時期に外耳炎を繰り返していて、このまま治らないのではないか」と悩んでいる飼い主さんも多いのではないでしょうか。
犬の外耳炎にはさまざまな原因があり、耳に起きている炎症だけを治療しても、その背景にあるアレルギーなどの原因に対応できていなければ、再発を繰り返すことがあります。また、そのようなケースでは、耳を洗浄するだけでは改善が難しいことも少なくありません。
本記事では、犬の外耳炎を考えるうえで大切な「4つの要因」について、実際の症例を交えながら解説します。愛犬の外耳炎がなぜ繰り返しているのかを考え、適切な治療につなげるための参考にしてください。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、繰り返す外耳炎について、耳の中の状態だけでなく、その背景にある原因まで考えながら診療を行っています。愛犬の外耳炎にお困りの方は、お気軽にご相談ください。

犬の外耳炎が何度も繰り返されてしまうのは、耳の炎症だけでなく、その背景にある原因へ十分にアプローチできていないことが一つの理由として考えられます。
外耳炎という言葉は、耳に炎症が起きている「状態」を表すものであり、その原因はさまざまです。動物病院で治療を受けて一時的に良くなっても、しばらくすると再発してしまうケースは珍しくありません。
大切なのは、ただ外耳炎を治療するのではなく、「なぜ外耳炎が起きているのか」という原因を考え、それに合わせた治療を行うことです。原因によっては、炎症だけを繰り返し治療していても再発してしまうことがあります。また、慢性的な外耳炎では、症状が進行すると手術が必要になるケースもあります。


動物病院の診療現場では、犬の外耳炎を次の4つの要因に分けて考えます。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 主因 | 外耳炎を起こすスタートとなる原因(アレルギー、異物、耳ダニ、脂漏症、内分泌疾患など) |
| 副因 | 外耳炎が起きた結果として生じるもの(マラセチアの増殖など) |
| 増悪因 | すでに起きている外耳炎を悪化させる要因(耳道の狭窄、耳垢の増加など) |
| 素因 | 発症リスクを高める要因(耳の形状、犬種的特徴、季節など) |
この4つの要因が複雑に絡み合って外耳炎は起こります。それぞれの要因を知ることが、繰り返す外耳炎の原因を正しく理解する第一歩です。

主因とは、外耳炎が何から始まっているかという、根本となる原因のことです。具体的にはアレルギー、異物、耳ダニ、脂漏症、内分泌疾患などが挙げられます。
このうち、特に多いのはアレルギーと脂漏症です。これらは体質によるものであるため、主因となる場合は長期的なコントロールが必要になるケースが多くなります。
一方、耳の中に異物があったり耳ダニの感染がある場合は、それらを取り除いたり治療したりすることで、外耳炎が改善する可能性があります。

副因とは、外耳炎が起こった結果として現れるものです。代表的なのがマラセチアの増殖です。
マラセチアを減らす治療を行うことで症状が改善することもあります。しかし、マラセチアの増殖は外耳炎が起きた結果として生じていることも多く、主因が残ったままでは外耳炎を繰り返してしまうことがあります。
そのため、マラセチアを減らす治療は大切ですが、それだけでは十分ではありません。主因にも目を向けながら治療を進めることが大切です。

増悪因とは、外耳炎をさらに悪化させる要因です。
外耳炎が起こることで耳道が腫れて狭くなったり、耳垢が増えたりすることも、この増悪因に当てはまります。

素因とは、外耳炎の発症リスクを高める要因です。垂れ耳などの耳の形状や、生まれつき耳道が狭いなどの犬種的な特徴が該当します。
また、季節も素因の一つです。特に高温多湿な時期は、外耳炎が起こりやすいとされています。


ここでは、実際の診察でもよく見られるケースとして、トイプードルの症例をもとに「4つの要因」がどのように関係しているのかを整理してみましょう。
3歳のトイプードルで、毎年梅雨の時期になると耳を痒がり、外耳炎を繰り返しているという子がいました。耳以外にも指先に痒みがあり、体のベタつきやフケは特に認められませんでした。
以前、かかりつけの動物病院で「アレルギーがあるね」と言われたことがあり、来院時には耳垢が多く、耳垢検査ではマラセチアが多数認められました。
この子の4つの要因を整理すると、次のようになります。
| 要因 | この子に当てはまる内容 |
|---|---|
| 主因 | アレルギー(耳や指先の痒み、これまでの経過から疑われる) |
| 副因 | マラセチアの増殖(アレルギーによる環境変化に伴って増殖) |
| 増悪因 | 耳垢の過剰な蓄積 |
| 素因 | 梅雨の高温多湿(毎年同じ時期に悪化する背景) |
このように、一頭の犬の中にも複数の要因が存在しています。マラセチアだけを減らす治療を行っても、主因であるアレルギーへの対応ができていなければ、外耳炎を繰り返してしまうことがあります。
大切なのは、それぞれの要因を整理し、どの要因が関係しているのかを考えながら治療を進めることです。
また、外耳炎があると自宅で耳を洗浄したくなるかもしれませんが、過度な耳掃除は耳の中を刺激し、かえって症状を悪化させることがあります。耳の状態によって適切な処置は異なるため、外耳炎がある場合は、ご自宅で無理に行わず、まずは動物病院で相談しましょう。

「マラセチアが多いから、まずは菌を減らそう」「耳掃除を定期的に行っていれば十分」。そのように考えていると、外耳炎を繰り返してしまうことがあります。
外耳炎はあくまで結果であり、その背景にある原因は一頭一頭異なります。副因(マラセチアなど)だけをケアしても、主因(アレルギーなど)にアプローチできていなければ、外耳炎を繰り返してしまうことがあります。
原因を見つけることは動物病院の役割ですが、その原因に合わせた治療やケアを続けていくには、ご家族の協力が欠かせません。
主因がアレルギーなどの体質による場合、完治は難しいこともあります。しかし、正しく理解し工夫を続けることで、症状をコントロールできるケースは多くあります。

犬の外耳炎が繰り返される背景には、耳の炎症だけでなく、主因・副因・増悪因・素因という4つの要因が複雑に関係しています。マラセチアなどの副因を減らすだけでなく、アレルギーや脂漏症といった主因まで考えながら治療を進めることが大切です。
「治療しても数週間でまた同じ症状が出る」「毎年同じ時期に外耳炎を繰り返している」という場合は、今行っている治療やケアが、主因に十分アプローチできていないサインかもしれません。
外耳炎を繰り返すと、耳道の狭窄などが進行し、手術が必要になるケースもあります。そのため、早い段階で原因を整理し、それぞれの要因に合わせた治療を行うことが大切です。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、繰り返す外耳炎について、耳の中の状態だけでなく、その背景にある原因まで考えながら診療を行っています。愛犬の外耳炎にお困りの方は、お気軽にご相談ください。
なお、本記事の内容は、当院のYouTubeチャンネルでも解説しています。実際の診療でどのように外耳炎を診ているのか、ぜひ動画でもご覧ください。