この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
以前から痒みの症状がありましたが、来院の3日前から症状が急激に悪化し、首や脇、股の部分を頻繁に掻くようになったため来院されました。
身体検査では、首の腹側、腋窩(脇)、鼠径部(股)を中心に発赤が認められました。
<初診時の皮膚病変>
首~胸部の発赤
腹部・鼠径部の発赤
皮膚スタンプ検査を実施したところ、好中球と球菌が認められ、さらに細菌を取り込んだ好中球(貪食像)が確認されました。
これらの所見から、細菌感染による皮膚炎(膿皮症)の併発が示唆されました。
痒みや炎症を抑えるため、ステロイド剤の内服を開始しました。
また、皮膚表面の細菌数を減らし、皮膚環境を改善する目的で抗菌性シャンプーと保湿剤を用いたシャンプー療法を実施していただきました。
治療開始から1週間後の再診時には、痒みと皮膚の赤みの改善が認められました。
<治療1週間後>

その後もシャンプー療法を継続しながら、ステロイド剤を休薬し、アポキルへ切り替えて治療を継続しました。
1か月後には皮膚病変は大きく改善し、痒みも良好にコントロールされました。
<治療1か月後>

膿皮症は皮膚の細菌感染によって生じる皮膚疾患で、アレルギー性皮膚炎を持つ犬ではしばしば併発します。
膿皮症が加わることで痒みが急激に悪化することも少なくありません。
本症例では細菌感染が確認されましたが、全身性の抗菌薬は使用せず、抗菌性シャンプーによる外用療法と基礎疾患であるアレルギー性皮膚炎の治療によって感染をコントロールすることができました。
近年は抗菌薬の適正使用が重要視されており、症例に応じてシャンプー療法などを活用することで、抗菌薬の使用を減らせる場合があります。
痒みや皮膚の赤みが続く場合は、皮膚感染が隠れていることもありますので、お気軽にご相談ください。