この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
「うちの子が慢性腎不全と診断されたけれど、これからどうすればいいのか分からない」「腎臓の数値が悪いと言われて不安でいっぱい」。
大切なご家族がそう診断されたとき、戸惑いや不安を感じる飼い主さんがほとんどだと思います。
この記事では、慢性腎不全とはどのような病気なのか、どのような症状に気をつければよいのか、そして食事やお薬とどのように付き合っていけばよいのかを、実際の診療でよくいただくご質問に沿って解説します。
慢性腎不全と診断されると不安になる方は多いですが、病気について正しく知ることが、これからの治療を考えていく第一歩になります。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、犬や猫の慢性腎不全の診断・治療に取り組んでおります。おうちの子の腎臓のことでご不安な方や、治療の進め方にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
慢性腎不全とは、腎臓の機能が少しずつ低下していく病気です。
腎不全には大きく分けて「急性腎不全」と「慢性腎不全」の2種類がありますが、この記事でお話しするのは「慢性腎不全」についてです。
腎臓は、その機能が一度失われてしまうと、元の状態まで回復することはほとんどありません。
だからこそ大切なのは、「どれだけ早く気づいてあげられるか」、そして「残された腎臓の機能をどのように維持していくか」です。

腎臓の最も大切な役割は、おしっこを作ることです。
もう少し詳しくいうと、体の中で作られた老廃物や毒素を、おしっことして体の外へ排泄する働きをしています。
ところが、慢性腎不全によって腎臓の機能が低下すると、これらの老廃物や毒素を十分に排泄できなくなります。その結果、体の中に毒素が溜まり、さまざまな症状が現れるようになります。


慢性腎不全になると、腎臓の働きが低下し、体の中の老廃物や毒素を十分に排泄できなくなります。その結果、さまざまな症状が現れるようになります。
ここでは、慢性腎不全でよくみられる代表的な症状をご紹介します。症状が現れる時期や進行の程度には個体差がありますが、それぞれの特徴について順番にみていきましょう。

慢性腎不全で比較的早い段階からみられる症状が「多飲多尿」です。
腎臓の機能が低下すると、体に溜まった老廃物や毒素を少しでも体の外へ出そうとして、まずおしっこの量が増えることがあります。それに伴い、お水を飲む量も増えていきます。
飼い主さんからすると、「最近、お水を飲む量が増えた」「おしっこの回数や量が増えた」といった変化に気づくことがあります。
比較的早い段階で気づきやすい症状ですので、日頃から飲水量やおしっこの様子を気にかけてあげることが、早期発見につながります。
慢性腎不全が進行すると、体に溜まった老廃物や毒素の影響で、吐き気や嘔吐がみられることがあります。
多飲多尿が比較的早い段階からみられる症状であるのに対し、吐き気や嘔吐が現れている場合は、腎不全がある程度進行している可能性があります。
そのため、「最近吐くことが増えた」「なんとなく気持ち悪そうにしている」と感じた場合は、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
慢性腎不全が進行すると、体に溜まった老廃物や毒素の影響で、食欲が落ちてしまうことがあります。
食欲の低下も、吐き気や嘔吐と同様に、腎不全がある程度進行してからみられることの多い症状です。

慢性腎不全は、できるだけ早い段階で気づいてあげることがとても大切です。ここでは、お家でできるセルフチェックと、動物病院での検査についてお話しします。
慢性腎不全では、多飲多尿が比較的早い段階からみられることがあります。
そのため、「今どうか」ではなく、「若い頃や1年前と比べて変化はないか」という視点で見てあげることが大切です。
例えば、次のような変化はありませんか。
こうした変化に気づいた場合は、一度動物病院で検査を受けることをおすすめします。
日頃から飲水量やおしっこの様子を気にかけておくと、小さな変化にも気づきやすくなります。
おうちでの様子を観察することに加えて、定期的に健康診断を受けることも、慢性腎不全の早期発見につながります。
中でも、尿検査は特に重要な検査です。腎臓はおしっこを作る臓器だからこそ、尿を調べることで早い段階の変化に気づけることがあります。当院では、少なくとも年に1回は尿検査を受けることをおすすめしています。
また、必要に応じて血液検査や画像検査(超音波検査など)を組み合わせることで、腎臓の状態をより詳しく評価することができます。


慢性腎不全では、お薬や療法食によって腎臓そのものを治すことはできません。
治療の目的は、残された腎臓の機能をできるだけ長く保ち、その子らしい生活を続けられるようサポートすることです。
慢性腎不全と診断されると、不安なことも多いと思います。だからこそ、今受けている治療が「何のために行われているのか」を知っておくことが大切です。治療の目的を理解することで、不安が少し和らぎ、納得しながら治療を続けていただけると思います。

慢性腎不全と診断されると、多くの場合、腎臓用の療法食への切り替えをご提案します。
しかし、診療でよくいただくのが、「療法食を食べてくれません」というご相談です。
腎臓用の療法食は、タンパク質やナトリウム(塩分)などを調整しているため、今まで食べていたフードに比べると嗜好性が落ち、なかなか受け入れてもらえないことがあります。
そこで次に、療法食を食べてもらうための工夫と、それでも食べてくれない場合の考え方についてご紹介します。

食事を切り替えることは簡単ではありませんが、少し工夫することで食べてくれるようになることも少なくありません。
例えば、次のような方法があります。
無理に一度で切り替えようとせず、その子に合った方法を探してあげることが大切です。
いろいろ工夫をしても、どの療法食もどうしても食べてくれない場合もあります。また、腎不全が進行していて食欲そのものが低下している場合は、療法食への切り替えが難しいこともあります。
そのような場合、当院では無理に療法食へ切り替えることを優先するのではなく、まずは食べられるものをしっかり食べてもらうことを大切にしています。
食べない状態が続くと、脱水や栄養状態の悪化につながり、かえって体調を崩してしまうこともあります。まずは食欲を安定させることが何より重要だと考えています。
まずは安定して食べてくれるごはんを探し、そのうえで徐々に腎臓用療法食に切り替えていくことをおすすめします。


慢性腎不全と診断されると、療法食に加えて、お薬やサプリメントが処方されることも少なくありません。
最初は問題なく飲めていても、「最近は投薬を嫌がるようになった」「毎日の投薬が負担になってきた」というご相談をいただくことがあります。
そのような場合は、一つひとつのお薬やサプリメントが「何のために処方されているのか」を、改めて確認してみてください。
腎不全の進行具合や現在の体調によっては、優先順位が変わることもあります。当院では、無理に飲ませることで食欲が落ちたり、投薬そのものが大きなストレスになったりする場合は、一度治療内容を見直すことをご提案しています。

慢性腎不全は、腎臓の機能が少しずつ低下していく病気です。一度低下した腎臓の機能を元に戻すことはできませんが、早い段階で気づき、適切な治療を続けることで、その子らしい生活を長く維持できる可能性があります。
日頃から飲水量やおしっこの様子を気にかけ、定期的な尿検査や健康診断を受けることが早期発見につながります。
すでに治療を始めている場合は、療法食やお薬、サプリメントを「何のために使っているのか」を理解し、その子の状態に合わせて無理なく続けていくことが大切です。また、療法食にこだわるあまり食べられない状態が続いてしまう場合は、まずはしっかり食べられることを優先し、体調が安定してから療法食への切り替えを検討していきましょう。
飼い主さんにとって一番安心できるのは、おうちの子が元気に過ごし、いつものようにごはんを食べてくれることではないでしょうか。その状態を少しでも長く維持できるよう、一緒に無理のない治療を続けていきましょう。
宮田動物病院(静岡県沼津市)では、犬や猫の慢性腎不全の診断・治療に取り組んでおります。おうちの子の腎臓のことでご不安な方や、治療の進め方にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
なお、本記事の内容は当院のYouTubeチャンネルでも動画で解説しております。獣医師が解説する慢性腎不全のお話が気になる方は、ぜひご覧ください。