この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
「歯の本数が多い気がする」とのことで、当院のどうぶつの小児科を受診されました。
診察の結果、永久歯が生え始めているにもかかわらず、乳歯が残っている「乳歯遺残(にゅうしいざん)」が確認されました。
下顎の犬歯部分を中心に、永久歯の萌出と乳歯の残存が同時に認められました。
乳歯が残ったままになると、
となる可能性があります。
術前には乳歯と永久歯が並んで存在している状態が確認されました。
両側下顎犬歯の乳歯遺残
正常
生後5か月齢ということもあり、すぐに抜歯を行うのではなく、自然に抜ける可能性もあるため、経過を観察しました。
その後、避妊手術を予定していた生後7か月頃のタイミングでも乳歯の残存が確認されたため、避妊手術と同時に乳歯抜歯を行う方針としました。
これらの手術を同時に行うことで全身麻酔を複数回行わずに済むため、身体への負担軽減にもつながります。
まず避妊手術を実施し、その後残存していた乳歯の抜歯を実施しました。
乳歯は見た目以上に歯の根の部分が長く残っていることが多く、永久歯や顎への影響を考慮しながら丁寧に処置を行っています。
左側:歯科用レントゲン(緑矢頭:乳犬歯、オレンジ矢頭:永久犬歯)
右側:口腔内の写真
2週間後、避妊手術の抜糸時に再診を行いました。
その時点で、
いずれも問題なく、良好な経過を確認できました。
現在は良好な状態を維持しており、治療を終了しています。
乳歯遺残は特に小型犬で多くみられる症状です。
放置すると、
などにつながることがあります。
「歯が二重に見える」「歯の本数が多い気がする」と感じた場合は、早めのチェックをおすすめします。

人と違って犬では永久歯が生えてきても、しばらくの間は乳歯と永久歯が共存する時期があります。
また、歯の種類によって永久歯が生えてくる時期にも差があるため、生後数か月の段階では必ずしも異常とは限りません。
一方で、小型犬では乳歯が自然に抜けずに残ってしまう「乳歯遺残」が比較的よくみられます。
乳歯が残ったままになると、将来の歯周病の原因になることがあります。
「このまま様子を見てよいのか」「抜歯が必要なのか」は、年齢やそれぞれの歯によっても判断が異なります。
気になることがあれば、子犬のうちに一度ご相談ください。