この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
初診で来院されました。
ご家族からは「食欲や元気に特に気になる様子はないが、一度全身をしっかり診てほしい」とのご希望があり、全身の健康チェックを行いました。
身体検査の際に口腔内を確認したところ、右下顎第三前臼歯に吸収病巣を疑う所見が認められました。
吸収病巣は猫で非常によくみられる歯科疾患で、歯が徐々に溶けていく病気です。
見た目の変化は小さくても、強い痛みを伴うことが少なくありません。
ご家族は口腔内の異常には気付いておらず、食欲や元気にも特に変化は感じていませんでした。
しかし、診察時の口腔内チェックによって吸収病巣が疑われたため、詳しい検査と治療をご提案しました。
吸収病巣を疑う所見の他に一部の歯には歯周病による炎症も確認されたため、歯科治療をご提案しました。
飼い主様に現在の状態や治療内容についてご説明し、同意をいただいたうえで後日全身麻酔下での歯科処置を実施しました。
麻酔導入後に口腔内レントゲン検査を行ったところ、右下顎第三前臼歯に吸収病巣(歯が溶ける病気)が確認されました。
肉眼写真
拡大写真
歯科用レントゲン画像
吸収病巣は見た目だけでは進行度を正確に判断できないため、歯科用レントゲン検査は治療方針を決めるうえで非常に重要な検査です。
歯科用レントゲン検査の結果、吸収病巣が認められた歯は保存が困難と判断し、抜歯を実施しました。
また、その他の歯については、マイクロスコープ下で歯周基本治療を行い、口腔内全体の環境改善を行いました。
術後の経過は良好でした。
2週間後の再診では、抜歯部位は良好に治癒し、炎症も認められませんでした。
また、ご家族からは「以前よりも食欲が増えた」とのお話があり、体重も増加傾向を示していました。
これまで普段どおりに生活しているように見えていましたが、実際には吸収病巣による痛みが食欲に影響していた可能性が考えられました。
吸収病巣は猫で非常によくみられる歯科疾患です。
歯が徐々に溶けていく病気であり、強い痛みを伴うことがあります。
しかし猫は痛みを隠すことが多く、
という場合でも病気が進行していることがあります。
今回の症例でも、ご家族は口腔内の異常に気付いていませんでしたが、診察時の口腔内チェックによって吸収病巣を発見することができました。

猫の吸収病巣では、
・歯肉が歯に覆いかぶさるように見える
・歯の一部が赤く見える
・歯肉が盛り上がっている
といった変化がみられることがあります。

(別症例の吸収病巣の写真)
このような変化がみられた場合は、できるだけ早めの受診をおすすめします。
また、吸収病巣は痛みを伴う病気でありながら、猫は普段どおりに生活しているように見えることも少なくありません。
そのため、歯や歯肉に気になる変化がある場合はもちろん、「一度口の中も診てほしい」という場合にも、お気軽にご相談ください。
猫は痛みを我慢することが多いため、定期的な口腔内チェックが早期発見・早期治療につながります。