この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
朝から元気がなく、食欲も低下しているとのことで来院されました。
飼い主様からは、「お腹が痛そうにも見えるし、気持ち悪そうにも見える」とのお話がありました。
原因を調べるためにレントゲン検査を実施しました。
その際、偶然写り込んだ胸部の一部に腫瘤(しこり)のような陰影が確認されました。
肺に発生する腫瘍の可能性が考えられたため、詳しい検査を行うことになりました。


翌日、CT検査を実施しました。
CT検査では左肺後葉に腫瘤性病変が認められ、画像所見から肺腫瘍が強く疑われました。
また、CT検査と併せて細胞診検査を実施しました。
細胞診検査とは、細い針を用いて病変の細胞を採取し、顕微鏡で評価する検査です。
検査の結果、「上皮性腫瘍(肺腺癌に最も一致)」との評価が得られました。これは肺から発生する悪性腫瘍(がん)の可能性が高いことを意味します。
細胞診だけでは確定診断には至りませんが、肺腫瘍である可能性が高いと判断し、外科的切除を計画しました。
CT検査および細胞診検査の結果から肺腫瘍が強く疑われました。

また、CT検査では明らかな転移所見は認められませんでした。
腫瘍は左肺後葉に限局しており、外科的切除が可能と判断したため、手術を実施する方針としました。
開胸手術を行い、腫瘍を含む左肺後葉を切除しました。
摘出した組織は病理検査へ提出したところ、肺腺癌と診断されました。
術後の回復は良好で、大きな合併症も認められませんでした。
現在は手術から約1年半が経過しています。
定期的にレントゲン検査やCT検査による経過観察を行っていますが、
と良好な状態を維持しています。
肺腫瘍は初期には症状がほとんどみられないことも少なくありません。
今回の症例でも、肺の異常を疑って来院されたわけではなく、別の症状をきっかけに行ったレントゲン検査で偶然発見されました。
CT検査を行うことで、
などを詳しく評価することができます。
また、細胞診検査を組み合わせることで、治療方針をより具体的に検討することが可能になります。

今回の症例は、肺の病気を疑って来院されたわけではありませんでした。
食欲低下の原因を調べるために行った検査の中で、偶然肺腫瘍が見つかりました。
病気によっては、症状が出る前の段階で見つかることがあります。
また、レントゲン検査だけでは判断が難しい場合でも、CT検査によって病変をより詳しく評価できることがあります。
定期的な健康診断は、現在の健康状態を確認するだけでなく、こうした病気の早期発見につながる可能性があります。
症状の有無にかかわらず、定期的なチェックをおすすめしています。