この記事の執筆者
宮田 翔平
宮田動物病院院長。静岡県沼津市で60年以上続く地域密着の動物病院として、飼い主様に寄り添った丁寧な診療を心がけています。
毎年、年に1回の健康診断を受けている子です。
今回も特に気になる症状はなく、元気や食欲にも大きな変化はありませんでしたが、健康診断の超音波検査で脾臓に結節状の病変が認められました。
腫瘤部分では脾臓の被膜が外側へ大きく膨らむような形態を示しており、このような脾臓の腫瘤は、大きくなることで破裂や出血を起こす可能性もあります。
脾臓に腫瘤が見つかった場合、良性の結節性過形成や血腫などのほか、血管肉腫をはじめとする悪性腫瘍も鑑別に挙がります。
超音波検査では、腫瘤の大きさや形状、内部の構造などを評価できますが、画像所見だけで良性・悪性を確実に区別することは困難です。
そのため、腫瘤の状態だけでなく、出血のリスクや全身の状態なども考慮しながら、追加検査や治療方針を検討する必要があります。
CT検査では、超音波検査だけでは評価が難しい部分も含めて、病変の位置や周囲の臓器との関係を詳しく確認することができます。
また、悪性腫瘍の可能性を考慮する場合には、胸部や腹部に明らかな転移を疑う所見がないかを確認することも重要です。
写真:脾臓に認められた結節(緑矢頭)
今回の検査では、明らかな転移を疑う所見は認められませんでした。
ただし、CT検査で明らかな転移が認められないことは、腫瘤が良性であることを意味するわけではありません。最終的な診断には病理組織検査が必要となります。
脾臓の腫瘤に対する治療方針は、腫瘤の大きさや形状、出血の有無、悪性腫瘍の可能性、患者さんの全身状態などを総合的に考慮して判断します。
今回の症例では、脾臓の表面から大きく突出する結節が認められ、画像検査のみでは良性・悪性を確定できなかったことから、脾臓摘出術を選択しました。
摘出した脾臓は病理組織検査に提出し、病変の性質を詳しく調べました。

摘出時の脾臓:表面から大きく突出する結節が認められます
病理組織検査の結果、脾臓の病変は結節性過形成と診断されました。
結節性過形成とは、脾臓の組織が局所的に増殖し、結節を形成する良性の病変です。特に中高齢の犬でみられることがあります。
良性病変であっても、結節が大きくなることや、画像上で悪性腫瘍との区別が難しいことがあります。
今回の症例でも、超音波検査やCT検査によって病変を確認しましたが、最終的に結節性過形成と診断できたのは、摘出した脾臓の病理組織検査によるものでした。
病理検査で良性と確認できたことは、今後の治療方針や経過観察を考えるうえでも重要な結果となりました。
経過は良好で、術後3日目で退院となりました。
病理組織検査では良性病変であることが確認され、その後も大きな問題なく経過しています。
脾臓の腫瘤は、今回の症例のように元気や食欲などに変化がなくても、健康診断の超音波検査で偶然見つかることがあります。
また、超音波検査で脾臓に腫瘤が見つかっても、画像だけで良性・悪性を確定することはできません。
今回の症例では、超音波検査で脾臓の異常を発見し、造影CT検査で病変の状態や転移の有無を確認したうえで手術を行い、最終的に病理組織検査によって結節性過形成と診断することができました。

脾臓の病気は、ある程度進行するまで目立った症状が現れないことがあります。
今回の症例も特に症状はありませんでしたが、毎年行っていた健康診断によって脾臓の異常を発見することができました。
血液検査だけでは分からない異常が、超音波検査などの画像検査で見つかることもあります。
特に症状がない場合でも、定期的に健康状態を確認していくことが、病気の早期発見や適切な治療方針につながることがあります。